CHAPTER
TWO
検証!未来につながるキャンパスライフ

#06 まじめに勉強?
友達とエンジョイ?

学習効果の
高い学び方

卒業後、「社会人力」を高めるのに
役立つ在学中の学びとは?

卒業生の皆さんは、どのような学生生活を送っただろうか? 「真面目に勉強に打ち込んだ」、「自分の興味・関心を追求することに夢中だった」、「クラブ活動に熱中した」…学生時代に情熱を注いだことは、人それぞれ違うだろう。卒業後、社会での活躍を考えた場合は、果たしてどのような大学生活を送るのが理想なのだろうか?

今回は、卒業後の成長の指標として「社会人力(卒業後に社会で身につけた知識・能力)」を取り上げ、この「社会人力」を高めるのに役立った在学中の「学習成果」として、「卒業時の学業成績」「社会人基礎力」「学生生活全般の満足度」という3つの指標を設定した。

ちなみに「社会人力」は、収入や仕事に対する満足感にも関係することが連載第4回(収入と仕事に対する満足 決めるのは、社会で身につけた力)で明らかになっている。

“3つの学習成果”

1 卒業時の学業成績
最終学年の成績を「下位(下の方)」から「真ん中」、「上位(上の方)」まで5段階で卒業生が自己評価した結果を集計。
2 社会人基礎力(卒業時に身についていた知識・能力)
15項目の知識・能力について「学部卒業時にどのくらい身につけていたか」を5段階評価した結果に基づく。(詳しくは第4回へ
3 学生生活全般の満足度
「学部での学生生活全般を振り返って、現在どのくらい満足していますか」という問いに対し、「まったく満足していない」から「とても満足している」まで4段階で評価した結果。

専門に強いが教養・語学は苦手。
見えてきた東薬生の得手・不得手

“3つの学習成果”の中で、2「社会人基礎力」に注目してみよう。「社会人基礎力」を構成する12の知識・能力項目それぞれについて、「卒業時に身についていた」と答えた割合を調べると、東薬の学生にとって得意な知識・能力と不得手な知識・能力があることがわかる。

薬学部、生命科学部のいずれも「大学の専門知識技術」の習得率が最も高く、一方で「幅広い一般教養知識」や「英語力」の習得は、苦手な傾向にあるようだ。また「チームワーク」や「粘り強くやり遂げる」ことには自信がある反面、「リーダーシップ」や「自ら分析し提案する力」といった批判的思考力の獲得には苦手意識を持っていることが見て取れる。

さて、一体どのような学び方をすれば、より良い「学習成果」を得ることができるのだろうか。

卒業時身についていた知識能力

学習成果の違いに見る
学び方の3タイプ

どのような学び方をすれば、“3つの学習成果”を高めることができるのか。

それを明らかにするために、「学業成績」「社会人基礎力」「学生生活満足度」それぞれの学習成果と関係の深い学び方の変数を探った。

その結果をまとめると、まず学部を問わず、「学業成績」と最も相関の高い変数として浮かび上がったのは、講義をどれほど熱心に受けたかを示す「専門講義の熱心度」だった。次いで「高校3年次の成績」や「大学で積極的に学習したか」といった項目が並ぶ。言うなればこれらは、地道で「勤勉な学び方」の成果であり、「学業成績」の高い人は「勤勉派」といえるだろう。

次に「社会人基礎力」と相関が高い項目として目を引いたのが、「卒業論文の達成レベル」や「高校での自律的学習度」「大学での積極的学習度」だった。卒業研究はとりわけ自主性や主体性が重視される学びだ。その意味では「社会人基礎力」は、「主体的な自学自習の成果」であり、これが高い卒業生は「自立派」と名付けることができる。

最後に「学生生活の満足度」では、「よい友人との巡り会い」「よい教師との巡り会い」「部活動の熱心度」など、先の二つとはまったく違う変数が上位に上がった。つまり「学生生活の満足度」は、「人的交流を大切にした成果」であり、これが高い卒業生は「友好派」と名付けられそうだ。

卒業時身についていた知識能力

勤勉派、自立派、友好派、
学習成果を高めるルートは一つじゃない

「卒業生調査」の回答から学習成果に関係ある学び方が明らかになった。強調したいのは、“3つの学習成果”を高めるには、それぞれ異なる学び方で努力する必要があるということだ。「学習成果」は多元的で、そこに到達するためのルートは決して同じではない。「学業成績」には勤勉派、「社会人基礎力」には自立派、「学生生活の満足度」には友好派と、それぞれ関係の深い学び方があり、卒業生は自分の得意な学び方で、それぞれ違った力を身につけたのだとわかってくる。

「望ましい学び方」は一つではなく、また順位をつけられるものでもない。勤勉な学生、自主自立型の学生、友好的な学生が多様に混在するところにこそ、キャンパスの魅力はある。そして、「学業成績」「社会人基礎力」「学生生活の満足度」のいずれか一つでも得意なところを磨く習慣が、卒業後の「社会人力」の向上につながっていくのだ。

学生生活が充実すると、
卒業後の「社会人力」が高まる?!

“3つの学習成果”と卒業後の社会人力との関係について、もう一つ興味深い点がある。「学業成績」のよい人が、卒業後にも「社会人力」を身につけやすいことは、誰もが頷けるだろう。ところが今回の分析結果は、薬学部、生命科学部のいずれも「学業成績」のみならず、「学生生活の満足度」の高い人も、卒業後の「社会人力」が高いことを示している。

たとえ学業成績は下位だったとしても、学生生活を満喫し、悔いなく卒業した卒業生は、社会に出てからも前向きに仕事に取り組み、「社会人力」を身につけて活躍しているのだ。学業にまい進するだけでなく、学生生活を充実させることも、生涯にわたって重要な意味を持つことが見えてくる。

これを教訓として生かせば、今後の大学教育においても、多様な学びのあり方を踏まえた学生支援を考えていけるのではないだろうか。

社会人力と学生生活の満足度・成績の関係
(薬学部)

社会人力と学生生活の満足度・成績の関係
(生命科学部)