CHAPTER
ONE
大学の学びは
仕事に役立つのか?

#05 追跡!

「社会人力」を高める
ファクターXを追え!

大学時代の学習は、影武者のように
現在の仕事を支えている

第4回(収入と仕事に対する満足 決めるのは、社会で身につけた力)では、収入や仕事に対する満足感を決定づけるのは、卒業後に社会で身につけた知識や能力すなわち「社会人力」であり、大学時代の学習はあまり役に立っていないという分析結果が明らかになった。果たして大学で学ぶことは、無意味なのだろうか。

そこで考えてみたいのが、「現在の知識・能力=社会人力」がどのように形成されるのかである。今回、「社会人力」を高める要因、ファクターXを探った。

その結果、「社会人力」を高めるファクターには、「年の功(労働経験年数)」、「現在の学習環境(学習時間、相談できる友人)」に加えて、「大学教育」に関わる三つの指標「学業成績」、「学生生活に対する満足度」、「大学で身につけた知識・能力(社会人基礎力)」が含まれることがわかった。つまり大学教育の成果が現在の「社会人力」を高めるのに一役買っている。大学時代の学習は、影武者のように現在の仕事を支えているといえる。

社会人力と学生生活の満足度・成績の関係(薬学部)

成績が良いほど、学生生活の満足度が高いほど、
社会人力が高くなる

「学生生活に対する満足感」が
生涯の糧になる

「社会人力」を高めるファクターXとして挙げられた大学教育に関わる三つの指標を見てみよう。興味深いのが、「学業成績」や「大学で身につけた知識・能力(社会人基礎力)」だけでなく「学生生活に対する満足度」も有意な影響を与えている点だ。薬学部卒業生を例に、より詳しく分析すると、学生生活に対する満足度の低い人は、「社会人力」が相対的に低く、高い満足感を持って卒業した人は、学業成績の悪い人でも、現在の「社会人力」は平均値よりかなり高い。

学生生活に満足したかどうかなど一見社会で働くことには何ら関係のないように思えるが、実はそれが卒業後の「社会人力」の形成に関わっている。いわば学生生活の充実が、生涯にわたる財産になるのだ。

「少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り」という言葉があるが、大学時代の学びや経験は決して無駄なものではなく、社会に出てさらに成長するための糧になる。「卒業生調査」は図らずもそれを証明したものになった。

ファクターXが社会人力を、
社会人力が仕事の満足度を押し上げる